恋愛結婚をしても、別れる夫婦は絶えません。

互いに好きになり、自分の意思で相手を選び、一緒に生きると決めたはずです。それなのに、なぜ関係は壊れるのでしょうか。

この疑問には、「本当に好きなら結婚は続くはずだ」という前提が含まれています。しかし、恋愛感情と結婚生活の安定は、同じものではありません。

恋愛は二人が関係を始める理由になります。けれども、始める理由が、その関係を何十年も運営する仕組みまで自動的に与えてくれるわけではありません。

恋愛が主に測るのは「今、この人にひかれるか」である。結婚が要求するのは「変化した二人で、生活を組み直し続けられるか」である。

この二つの違いから考えると、好きで結婚した夫婦が別れることは、それほど不可解ではなくなります。

「恋愛結婚なのに離婚した」という数字の読み方

最初に、分母を確認する必要があります。

恋愛結婚が多数を占める社会では、離婚する夫婦の多数も恋愛結婚になるのが自然です。離婚した夫婦の中に恋愛結婚が多いというだけでは、恋愛結婚の離婚率が、ほかの結婚より高いとは言えません。

国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査では、2019年から2021年6月までに結婚した初婚どうしの夫婦について、74.8%が「恋愛結婚」、15.1%が「ネットで」、9.8%が「見合い結婚」に分類されています。

ただし、この分類は愛情の強さを測ったものではありません。「学校」「職場」「友人やきょうだいの紹介」などで知り合った場合を恋愛結婚、「見合い」「結婚相談所」を見合い結婚とした、出会い方による分類です。ネットで知り合った夫婦も、実際には恋愛関係を経て結婚したと考えられます。

したがって、この統計から「恋愛で結婚した人の何%が離婚するか」は分かりません。さらに、見合い結婚の継続率が高かったとしても、それが関係の幸福を示すとは限りません。かつては、家族の関与、経済的依存、世間体など、離婚を難しくする条件も強かったからです。

結婚方式を比較するときは、少なくとも次の三つを分ける必要があります。

  1. どのような経路で結婚したか
  2. その結婚が続いたか
  3. 続いている二人が幸福か

別れたからといって、最初の恋愛が偽物だったとは限らない

離婚した夫婦を見ると、「最初から相手を見る目がなかった」「本当には愛していなかった」と説明したくなります。

しかし、これは結末を知った後の評価です。

結婚した時点では、相手を本当に好きだった。それでも、その後の環境と二人が変化し、関係を維持できなくなることはあります。

現在の気持ちが真実であることと、その気持ちが将来も変わらないことは別です。約束が誠実であることと、約束を実行できることも別です。

恋愛は、ある時点における二人の関係を評価します。結婚は、その時点ではまだ存在しない将来の二人まで含んだ契約です。

そこには、どうしても予測の限界があります。

恋愛中に見える能力と、結婚後に必要な能力

恋愛中に相手の魅力として見えやすいものがあります。

  • 一緒にいて楽しい
  • 会話が合う
  • 優しく接してくれる
  • 知性や容姿に魅力を感じる
  • 自分を必要としてくれる
  • 性的な親密さがある

これらは、結婚後も重要です。しかし、共同生活では、それだけでは足りません。

結婚すると、次のような能力が日常的に問われます。

  • お金と時間の使い方を調整する
  • 家事、育児、介護を分担する
  • 疲労や不機嫌を相手に処理させない
  • 意見が違っても、人格を攻撃しない
  • 自分の非を認め、謝罪する
  • 相手の変化に合わせて役割を組み直す
  • 問題が起きた後に、関係を修復する

魅力的な恋人が、必ずしも優れた共同生活者とは限りません。反対に、恋愛の初期には目立たなかった誠実さや調整力が、結婚後に大きな価値を持つことがあります。

恋愛では「相手が何を与えてくれるか」が見えやすい。結婚では「二人の負担をどう引き受けるか」が見えてくる。

交際中には存在しなかった問題が、結婚後に生まれる

交際中に相手を注意深く見ても、将来の問題をすべて予測することはできません。

転職、失業、病気、出産、育児、住宅購入、親の介護、収入差、子どもの教育。結婚後には、交際中には存在しなかった条件が次々に加わります。

これらは、相手の「隠された本性」を単純に暴くのではありません。新しい環境が、二人に新しい役割を要求するのです。

子どもが生まれる前には家事分担に問題がなかった夫婦でも、育児が加われば余裕を失うことがあります。収入が安定している間は穏やかだった人が、失業によって自尊心を傷つけられ、攻撃的になることもあります。

結婚生活の難しさは、結婚時点の相性だけでなく、状況が変わったときに相性を作り直せるかにあります。

幸福度の上昇は、そのまま固定されない

結婚すると、生活満足度はどう変わるのでしょうか。

Lucasらが2万4千人以上を15年間追跡した研究では、平均的には結婚の前後に生活満足度が上昇した後、時間とともに以前の水準へ近づく傾向が示されました。ただし、その変化には大きな個人差があります。

StutzerとFreyの17年間の縦断研究は、幸福度の高い独身者ほど結婚しやすいという選択効果と、結婚から得られる幸福の大きさが夫婦によって異なることを示しています。結婚後の追加的な幸福は、特に最初の数年間に大きく表れていました。

この結果は、「結婚しても幸福にならない」という意味ではありません。

結婚には、愛情、支援、経済的な協力、孤独の軽減、生活の安定など、幸福を高める経路があります。一方、人は良い変化にも慣れます。結婚による高揚感が日常へ変わること自体は、失敗ではありません。

問題は、高揚感が落ち着いた後に残るものです。

信頼、安心、役割分担、会話、共同経験が残れば、恋愛初期とは違う形で関係は続きます。それらが育っていなければ、「以前ほどときめかない」という感覚だけが残り、愛情が消えたと解釈されることがあります。

小さな不公平は、毎日反復される

恋愛中は、会う時間が限られています。互いに比較的よい状態で会い、疲れたら自分の場所へ戻ることもできます。

結婚すると、小さな癖や不公平が日常になります。

一度だけなら気にならない片づけの不足も、毎日続けば負担になります。一度の約束忘れは許せても、繰り返されれば「自分は大切にされていない」という意味を持ち始めます。

新婚夫婦の仕事量と結婚満足度を追跡した研究では、本人の仕事量が多いことより、仕事量の多い配偶者を持つことが、その後の結婚満足度の低下と結びついていました。研究者は、長時間労働によって家庭への時間とエネルギーが減り、その影響が相手に及ぶ可能性を論じています。

結婚生活では、自分の負担は自分だけで完結しません。仕事の疲れ、家事の不足、経済的不安、感情の処理が、相手の生活へ移ります。

大きな裏切りがなくても、小さな未処理の負担が積み重なれば、関係は摩耗します。

問題は、対立することより、戻れないこと

長く暮らす二人の意見が、常に一致することはありません。

したがって、良い関係を「喧嘩をしない関係」と定義すると、現実から離れます。重要なのは、対立の後に戻れるかどうかです。

Salvatoreらが若いカップルを対象に行った研究では、対立後の短い時間に気持ちを切り替え、関係を立て直す力が高い相手を持つ人ほど、関係に肯定的な感情を持ち、満足度も高い傾向がありました。その回復力は、2年後の関係の安定とも結びついていました。

また、GottmanとLevensonが79組の夫婦を14年間追跡した研究では、強い否定的感情は早期の離婚と、肯定的感情の乏しさは、より後期の離婚と関連していました。

いずれも特定の集団を対象とした観察研究であり、個々の夫婦の離婚を確実に予言するものではありません。それでも、対立の有無より、対立を関係全体の否定にしないこと、そして平時の肯定的な関わりを失わないことが重要だという手がかりになります。

謝る。説明を聞く。一度中断して落ち着く。問題と人格を分ける。役割を再交渉する。

こうした行為は、恋愛感情ほど劇的ではありません。しかし、長期の関係を支えるのは、この地味な修復の反復なのかもしれません。

愛情があることと、関係が続くことも別である

愛情が残っていても、別れる夫婦はいます。

同じ問題が何度も繰り返され、改善の見込みがなくなれば、愛情より消耗が上回ることがあります。一緒にいることで互いを傷つけ続けるなら、関係を終えることが、最初の恋愛が偽物だった証拠になるわけではありません。

反対に、愛情や幸福が乏しくても、続いている結婚があります。

経済的依存、子ども、住宅、親族関係、世間体、離婚手続きの負担などは、関係を継続させます。結婚の継続年数には、関係の質だけでなく、退出の難しさも含まれています。

慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターの研究は、日本人女性のパネルデータを用いて、夫婦関係に満足する既婚女性は未婚女性より幸福度が高い一方、不満のある既婚女性は未婚女性より幸福度が低いことを示しました。さらに、この分析では、不満のある結婚に伴う幸福度の低下幅が、離婚に伴う低下幅より大きいという結果でした。

女性だけを対象とした観察研究であり、離婚すれば幸福になると一般化することはできません。しかし、「既婚であること」と「幸福な結婚にいること」は分けなければならないことを示しています。

米国の全国縦断調査を使って12年間の低品質な結婚を調べたHawkinsとBoothの研究でも、慢性的に質の低い結婚を続けた人は、ほかの継続婚の人より、幸福度、生活満足度、自尊心、健康が低く、心理的苦痛が高い傾向を示しました。

別れたことだけで失敗とは言えない。続いたことだけでも成功とは言えない。

恋愛は、結婚の必要条件でも十分条件でもない

では、恋愛結婚には意味がないのでしょうか。

そうではありません。

自分で相手を選び、親密さを確認し、一緒に生きたいと思えることには大きな価値があります。愛情は、相手を理解しようとする動機になり、困難を乗り越える力にもなります。

しかし、恋愛感情だけで共同生活の問題が解決するわけではありません。愛情があっても、役割分担を話し合えない。相手を好きでも、怒りを制御できない。別れたくなくても、自分の誤りを認められない。こうしたことは起こります。

逆に、激しい恋愛感情が落ち着いても、敬意、信頼、責任、親しさによって続く関係があります。

恋愛は結婚を始める有力な条件ですが、恋愛だけで結婚が続くわけではありません。さらに、恋愛の高揚が弱くなっても、結婚が直ちに空虚になるわけでもありません。

結婚は、相手を選ぶ一度の決断ではない

好きで結婚した夫婦が別れるのは、恋愛が必ず間違っていたからではありません。

恋愛中には見えなかった問題が生まれる。二人の役割が変わる。幸福の高揚に慣れる。小さな不公平が積み重なる。対立後に戻れなくなる。相手だけでなく、自分自身も変わる。

結婚は、結婚式の日に相手を一度選んで終わる出来事ではありません。

変化した相手を理解し直し、変化した自分を説明し、生活条件に合わせて二人の関係を更新する。その選び直しを、何度も行う過程です。

恋愛は二人を結びつける。結婚を支えるのは、結びついた後の二人が、関係を修復し、更新し続ける能力である。

恋愛結婚をしても別れる夫婦がいることは、恋愛の無意味さを示しているのではありません。

それは、愛情があれば生活は自動的に成立する、という期待の方に無理があることを示しているのではないでしょうか。

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